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植田耕二氏著「直球・曲球」

「3大手共同記者会見の狙い?」

2012年6月11日付 第212号掲載

関西中央グループの薬師寺薫氏、北港梅田グループの古知愛一郎氏、未来都グループの笹井美智子氏は4月18日、大阪市内の「ザ・リッツ・カールトン大阪」で揃って共同記者会見を行った、という。

薬師寺氏は「旧三菱タクシーの未来都さんと梅田交通さんは同じ協同組合をつくっていたこともあった。3事業者とも同じような規模(1000両前後)なので、経営上の悩みや話題も共通している。そこで、大変厳しくなったタクシー業界をどのように乗り切っていくか。われわれの規模では業界に対する責任ということもある。大きいから強いという主張をしようとは思っていない。みんな平等という発想はあるけれども、大きなクルマを動かした経験のある人と小さなクルマを動かした経験しかない人が同じということはない。会員が増えた大阪タクシー協会の全体を考えながらわれわれの規模の責任というものを果たしてゆきたい」と冒頭発言をして、記者会見は始まったもようだ。

薬師寺発言は要するに1000両規模の事業者と100両前後の規模の事業者の発言の重みが違う、ということにあったのだろう。ここで思い出したのは昔、相互タクシーの多田清社長が、大阪旅客自動車協会から分裂し、大阪タクシー協会を作る直前、記者を相互タクシー関目本社に呼び出し、「キミはどう思うかね。500両以上の規模の大事業者と10両前後の小規模事業者が協会内で同じ発言権を持つということはおかしくないかね。三三会や三五会、三六会の事業者が、われわれ大手事業者の意向を無視して勝手なことをやっていることは、もう我慢ならない。この現状を改善するために大手事業者は結束を強めようと考え、近く大手事業者会を作ろうと思う。日本交通の沢春蔵クンや都島タクシーの高士政郎クンとも相談しているのだが、キミも協力してくれよ」という話だった。

なんだか多田氏の発想と、多田氏と激しく対立した薬師寺氏の発想は、どこか似ているように感じるのは、往時を知る記者だけだろうか。当時の多田清氏が「協会費ですら10両規模の事業者に比しわれわれは何倍も負担をしている」として、「大手事業者の発言の重みを中小事業者らはもっと尊重すべき」ことを強調していたことと同根のもの、と記者は感じるのだが、果たしてどうだろう。