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植田耕二氏著「直球・曲球」

「“子孫に美田残さず”のウラ表」

2011年7月25日付 第170号掲載

前号末尾に筆者は、相互タクシーグループの総帥・多田清氏を「後継者問題の失敗を目の当たりにして、この人の正体を見た思いである」とネガティブに断じている。古い資料をいじっているうちに、多田精一クンが勝山市に本社を置く相互タクシーの社長を降りた理由が分かってきた。かの相互タクシーは400億円に近い負債をかかえ福井地裁に自己破産申請、これが認められたからである。資料によると、負債のほとんどが国、県、市などの税金だ。破綻した県内企業の負債額としては、過去最高額だったと言われている。

21歳の学生社長の責任と言うよりも、やはり精一クンの実母であり相互タクシーを動かしていた小野親子氏の責任であろう。当時、小野氏は専務取締役という立場だったように記憶する。創業時からの役員諸氏を社外に排除し、文字通りほしいままに相互タクシーを牛耳っていた。ちなみに1995年(平成7年)度の高額所得者のいわゆる長者番付をみると、1位:多田精一(相互タクシー社長)48億8,745万円。2位:宮本雅史(元スクウェア社長)17億7,220万円。3位:大迫忍(ゼンリン社長)12億5,973万円。4位:遠田哲男(元駐車場経営会社社長)11億2,720万円。5位:斎藤一人(食品販売業)11億1,573万円。6位:久岡滋子(不動産賃貸業)8億6,302万円。7位:川上宏(会社役員)8億5,067万円。8位:中島健吉(平和社長)8億1,542万円。9位:清水利雄(会社役員)7億9,462万円。10位:波多野康二(国際自動車社長)7億8,725万円。これがベストテンである。

筆者の知っている、かの有名な日本画家・平山郁夫氏は17位で6億4,277万円。多田精一クンは平山センセーの約8倍の年収を得ていたことになる。20歳になったばかりの学生社長が50億に近い収入を得ていたことを、読者の皆さんはどう理解されるか。筆者は“子孫に美田を残さず”と記者団の前で語ってきた多田清氏の言葉のむなしさを感じずにはいられない。(以下次号に続く)