《人気コラム》
植田耕二氏著「直球・曲球」

「昔の相互と今の相互は違います」の弁

2011年5月30日付 第162号掲載

前号で相互タクシーの多田清社長の正妻だった多田幸さんと小野幸親さんと比較対照した。その中で「タクシー業界はオトコ社会」「その社会に“水商売上がり”の女性の小野さんが上手くやっていけるとは思わない」と書いた。ある読者から「あの表現はプライバシー権の侵害。かつ差別的表現じゃないか」という批判を受けた。

ある意味で「そうかも知れない」という思いは筆者にもある。しかし、小野さんのことを全く知らない筆者がそういう表現を使用したのは、多田清社長の信頼厚い重役から聞いたことが大きい。「ウチの社長は、ミナミの“三流芸者”に取り付かれて困ったものだ」という愚痴話から来ている。

愚痴った人の名前をここであげることはできないが筆者は「京都の祇園の芸者さん」上がりと思い込んでいたこともあって強い印象として残った。祇園なら一流でミナミなら三流というわけではないだろうが、それがあの表現になったものだ。芸者さん上がりでも立派に事業経営者に転進して成功している人は沢山おられるはず。筆者がここで問題にしているのは多田氏が「相互の総資産は数千億」と豪語していた巨大な資産を、小野さんが水のように綺麗さっぱり流していったことからきている。

最近、筆者は相互タクシーの取締役だった人に会い、小野さんの人柄の片鱗をうかがった。「ああ、あの人は人間不信のカタマリのようなお人です。会社のために良かれと思って進言しても、自分への批判と受け止め進言したものを片端から冷遇するお方」と厳しい言葉が返ってきた。

「あなたの書かれたものはいつも興味深く拝見しています」と言いながら「あなたは昔の相互を知っていらっしゃるかも知れませんが、現在の相互の実情をご存じない。『相互』のアンドンを掲げて走るにたる乗務員はどんどん去っていっていますよ。最後はカスばかりが残るでしょう」と厳しい批判を聞かされた。そう言われれば、最近の相互タクシーの内情は全く知らない。一度、相互タクシーに行き、社内事情などを取材しなければと強く思った次第である。