次期代表と目された大沼氏に緊急インタビュー
ワンコインタクシー協会代表代行が脱退の意向
創設者・町野氏急死後、幹部間で路線を巡り亀裂?


【大阪】町野勝康氏が急死後、同氏が代表理事を務めていた(一社)ワンコインタクシー協会は分裂含みの様相を呈している。執行部で路線を巡る意見の対立が激化。近く脱退の意向を示しているのは、次期代表理事と目されていた大沼仁洪・代表代行だ。

  かつて名義貸しが禁じられている道路運送法(33条)違反等があったとして大幅な車両停止処分が科せられたワンコインタクシーも今はタックンに商号変更し、指摘事項は大幅に是正されたが、大沼氏は「そうでないところもあると聞く」と指摘する。

  カリスマ指導者と言われたチト―大統領亡き後、国土が分裂したユーゴスラビアを彷彿とさせる出来事が、小規模ながらも同じタクシー業界内で生じている。

  大沼氏がオーナーを務めるタックン大阪は合法運賃の公定幅下限・初乗り2`660円(中型)で営業している。本紙は4月9日、大阪市内で大沼氏に緊急インタビューを行った。

  ――  ワンコインタクシー協会が分裂するようになった経緯についてお話し下さい。

  大沼  いちばん大きな見解の相違は、タクシーは公共交通機関であり、許認可事業です。その許認可事業をいただいて人命を運んでいます。その中で、国土交通省が定めた運行管理を遵守するのが絶対使命であり、それができなければ、やはり処分を受けます。その処分の中で、顕著な違反や大きなものもあれば、中程度など、明確に定められていると思います。その中で、コンプライアンスに対する考え方の違い。軽く捉えるのか、重く捉えるのか。その辺の考え方の違いが根本的にあるのが、分裂の要因となりました。

  ――  大沼氏が直接、経営に関わってきたタックン大阪と、原氏の大和川交通は、コンプライアンスを遵守してきたと。

  大沼  はい。今まで、過去にも監査は入られていますが、タックン大阪は設立以来、監査は4回入られていますが、処分は文書警告の1回だけです。過去のワンコインタクシーのときには車両停止処分を科せられましたが、それから是正をして、(ワンコインタクシーを商号変更した)タックンも今は満点ですし、監査に入られても処分を受けたことはありません。ですから、特にタックン2社に限っては、大阪タクシー協会に入ったとしても、賃金は上位の会社になるだろうと自負しています。

  ――  それは運転者教育も含めて。

  大沼  そうです。

  ――  車両もだいぶ、グレードの高いものに替わってきているという印象です。

  大沼  大和川交通の原氏のところも頑張っておられます。当社もよい車両に乗っていただいて、まだまだですが、運転者の質も上げていこうという考え方です。今ですと、東京・日本交通さんが大阪に進出してきていますが、そうした会社に少しでも追いつくようにしたいと思っています。それに対し、故町野勝康会長や協会の現幹部は、少し旧態依然の考え方なのではないか。またはそうした考え方の方は多いので、少し意見が合わないというのが、長年の悩みでした。

  ――  とは言うものの、ワンコインタクシーが誕生し、その後、いくつかの自動認可下限割れである初乗り運賃500円を適用する会社ができ、ワンコインタクシー協会が設立された当初には名義貸し的なこともやっていたようですが、それは改善されたということですね。

  大沼  はい。当時の業界紙にも載りましたし、また特に、ワンコイン堺とイーグルタクシーさんが、1年がかりで当局から指導を受けていました。それをグループの中から、目の当たりにしています。当時の近畿運輸局自動車部長は新垣さんでしたね。

  ――  当時、新垣部長が名義貸しの定義付けを文章化するなど、精力的に名義貸し撲滅に取り組んでおられました。

  大沼  新垣部長には当時、「当社は改善しました」と報告しました。当時はワンコインタクシーがありましたし、私はワンコインドームの社長をしていましたので、ワンコインドームに来ていただいて、「きちんと対応できています」と言い、改善したつもりです。ただ、ワンコインドームはいろいろなことがあって、私が社長を離れるようになって、急激に揺れ戻しが起きたようです。

  ――  タックン大阪以外では、いまだに名義貸し的なことをやっているところはが現実にあるということですね。

  大沼  その辺のところは、私もその会社の中へ入っているわけではありませんので…。ただ、いろいろなうわさを聞いたり、実際に運転者の中で、そうしたうわさが立っています。

  ――  私たちが見る限りは、道路運送法違反となる、いわゆる名義貸しがあったわけですが、このことが国会でも問題になりました。その当時の論点は、これは業務の請負だということで問題になったわけですが、そうした認識は当時ありましたか?

  大沼  そうですね。請負業だという認識はありましたね。ですから、だんだんと是正をしていき、まずは車両が会社所有である。そしてリースをするならいいだろう、ということだったのですが、当時は営業車両の持ち帰りだとか、自由出勤だとか、点呼がおざなりになるとか、運転者管理がおろそかになるだとか、いうことがあり、車両の持ち帰りをやめさせて管理ができるという体制には持っていきました。しかし、やはり当時、問題になっていたのは。運転者にすべて負担させている。そして、会社は管理料だけをもらっている。それは、まさしく請負業ですよね。その辺が経営として安定収入が得られ、楽だからやめられないのかな、というのが外から見るとあるようです。

  ――  少し違うかもしれませんが、エムケイの場合はリース賃金があり、営業収入全体に対して消費税等税金がかかっています。そうした中で、点呼時には担当の管理者が車両の隅々までチェックしてから送り出すなど、管理はしっかりしています。当時を振り返り、そのような点を見習ってやろうということにはならなかったのでしょうか。

  大沼  到達には難しいでしょうが、先程は東京・日本交通さんの名前を出しましたが、エムケイさんとは全く資本力も違いますし、教育システムや経営理念も違いますが、良いところは見習っていきたい。まずは車両のグレードアップを、社内でできるかぎり頑張る。そして、できるかぎり、運転者の言葉づかいやマナーを向上させるということを、企業理念として、小さいながらもやっていこう、というのが、私の考え方です。ところが、ワンコインタクシー協会、また故町野会長自体が「それはできる者はやったらいいが、できない者にそんなことをやっても無駄だ」ということになるので、どうしてもズレが生じていました。ですから、協会として履行しようということになると、私の意見は絶対に通りません。それぞれの会社のやり方でやるということになってしまい、統一した取り組みはできません。

  ――  ワンコインタクシー協会で分裂騒動が起きました。今、組織としての維持が危うい状況となり、大沼氏自身がどうするかという局面に立たされていると思います。今後について、どうしようとお考えですか?

  大沼  私は、タックン大阪の40両(運転者数60人)を起点として、城東商事という会社を新規会社として、この会社を50両規模のタクシー会社にして、当面は100両を目指して頑張っていきたいと思っています。

  ――  大阪市域は特定地域なので、増車や新規参入はできません。なので、買収で増やしていくと。

  大沼  そうです。

  ――  これまでは譲渡譲受をするにしても、ワンコインタクシー協会内の会社同士など、範囲は狭められていたのではないかと思います。しかし、それにとらわれず、対象範囲を広げてようということですね。

  大沼  はい。

  ――  タックン大阪では、どのような賃金体系をとっていますか。

  大沼  基本的には、60%のオール歩合です。養成で入ってくる新人には、いまのところ、1年間、月給25万円保障を新制度としてやっています。平均賃金は大阪の上位に来ていると思います。当社では、夜勤では60万円をあげない人はいません。そうできるように、皆で一丸となって協力しています。稼働率という面では、少し悪いかなというところもありますが、運転者さんの懐具合はいいと思います。

  下限割れ運賃を適用していたとき、平均賃金が高いために、(期間限定運賃の)査定で(他のワンコイン会社のように値上げ指導で初乗り)540円などはもらえなかったのです。今は運転者の平均年齢は59歳と上昇していますが、昔は他社と比べても、5歳は若かったですね。

  私は、常々会議で言ってきましたが、公定幅運賃はいいのですが、幅をもう少し広げてほしい。そうすれば、高い人は低い運賃を選択できますし、下の事業者は上げられます。そうした自由度を持たせておけば、悪い法律ではありません。ただ、現状では選択のしようがありません。公定幅運賃は意義があると思いますが、そのやり方です。

  ――  以前、大沼氏は公定幅の上下格差は、運賃の15%が理想だと言われていました。

  大沼  それが理想ですが、せめて10%は必要だと思っています。

  ――  ただ、運賃裁判があった全国11地域で公定幅下限の見直しをすると国土交通省は言っていますが、再査定しても、良くて10〜20円下がるかどうかではないかと見られています。

  大沼  そうなったとしたら不満です。ですが、私自身としては、むちゃくちゃ不満というほどではありません。現在も公定幅には不満ですが、下限の660円でやっています。不満ではありますが、訴訟をするということは、私はやりません。法律で決まったことには従います。

  ――  ありがとうございました。