大阪と福岡で高裁決定 MKに軍配
本裁判を睨み 国の即時抗告を棄却
地裁で続く本裁判の行方を反映?

(2015年1月7日付・ファクスサービス)

【全国】大阪高裁は1月7日、エムケイ(京都市南区、青木信明社長)、大阪エムケイ(大阪市大正区、青木義明社長)、神戸エムケイ(神戸市中央区、青木義明社長)、滋賀エムケイ(滋賀県大津市、辻安廣社長)、京都府の個人タクシー・エムケイパートナー14人が現在適用している公定幅下限割れ運賃に対し、近畿運輸局長が行おうとしている運賃変更命令の差し止めを求めた申して立て(仮処分申請)の決定(即時抗告の棄却)を行った。

  現在、大阪地裁では運賃変更命令の差し止めを求めた本裁判が行われているが、同裁判の判決が出るまで現行運賃が適用できる「仮の差し止め」が認められた。同様の決定は同日福岡高裁で、福岡エムケイ(福岡市中央区、青木義明社長)が福岡地裁に提訴した運賃変更命令差し止め訴訟(仮処分決定)の即時抗告(国側)に対しても行われた。エムケイグループで公定幅下限割れ運賃を適用しているのは、これら5社14者のほか、訴訟していない札幌エムケイ、名古屋エムケイがあるが、今回の仮処分決定はこれら会社に対しても適用される。一方、東京エムケイは公定幅運賃(初乗り・事後加算1回分短縮)を適用している。近運局は7日、今回の決定に対し、「主張の一部が認めらておらず残念。決定文は現在、関係者で精査中で、今後どうするかを協議している」とのみコメントした。今回は憲法裁判ではないため最高裁への特別抗告はできず、できるのは許可抗告のみで、抗告受付期間は決定の言い渡しから5日間。昨年9月に結審となった高裁での仮処分決定を巡る抗告裁判は、年をまたいだ決定言い渡しとなり、大阪高裁と福岡高裁が同日決定を行うことになった。折しも、タクシー業界待望の特定地域指定基準パブリックコメント(意見公募=昨年12月26日〜1月25日)が行われてる最中の決定であり、業界関係者からは「何のために規制を求めてきたのか分からない」などと、ため息とともに困惑の声が上がっている。高裁の決定は7日午後1時に言い渡されたが、エムケイグループでは同日午後4時から、大阪高裁司法記者クラブで記者会見を開いた。要旨はつぎの通り。

  「平成21年に施行されたタクシー特措法、今年1月に施行された改正タクシー特措法のもとで減車、最高乗務距離規制、公定幅運賃が実施され、一連の規制における天王山とも言える運賃裁判で、大阪高裁(福岡高裁も同様)が全面的に主張を認めた。現在の公定幅運賃が裁量権を逸脱しているとしており、規制に対し大きな示唆を与えた。安倍政権が岩盤規制を打ち砕き、規制緩和・自由化をしていく流れから、タクシー業界は逆行していた。準特定地域、さらに厳しい特定地域が指定される。この業界はどの国で商売しているのか、と思いたくなるが、一連の流れを司法判断である意味食い止めていただいた。我われもこの決定に安住せず、サービスと質で貢献し、タクシー業界で大きなうねりとなればと思う。消費者、利用者に大きな支援をいただいたことに御礼を申し上げたい。一方、公定幅運賃を巡る本訴訟は法廷で続けられているが、最高乗務距離規制、加重処分、減車、運賃問題等、すべての訴訟(仮処分決定含む)で勝訴することができた。国と行政はこの司法判断を尊重し、完全は自由化とまでは行かなくても、サービス、安全面はもちろん、商売の原点とも言える運賃の問題、参入規制の問題、増減車の問題では、事業者側の意思をある程度尊重していただけるような管理手法に変えていただきたい」(青木信明・エムケイ社長)

  「今回の大阪高裁決定は大阪地裁決定をすべて踏襲している。さらに高裁で国が主張した事項、これは新たな事項ではないが、これに対し逐一反論し、国の抗告の理由がないということで抗告を棄却した。仮の決定が高裁でも出たわけだが、本訴は別に大阪地裁で粛々と進められている。もともと行政に対し司法がどこまで関与できるかということについては、ひじょうに消極的だった。従来、司法は行政が処分をしてから、事務的にそれが違法であれば取り消すという手法が取られていたが、平成16年の行政訴訟法改正で義務付け訴訟(裁判所が行政に対し、このような処分をせよと命令するもの)と差し止め訴訟(裁判所が行政に対し、このような処分をしてはならないとする命令)制度ができた。それに対し、仮処分(仮の差し止め)をするという仕組みになった。仮の差し止めが認められたケースは過去2件あり、今回が3件目で、事例としてはひじょうに少ない。仮の差し止めが認められるためには①処分の蓋(がい)然性(=確実性)②償いことができない損害を避けるための緊急の必要が認めらる時――の両方を満たす必要がある。①は地裁、高裁でクリアできたが、②はハードルが高かった。『営業停止や事業取消までされれば会社はなくなってしまうし、運転者の生活もある。利用者利益も損なわれ、償うことのできない損害になる』と主張し、地裁、高裁で認められた。これら主張は本裁判で2、3年かけてじっくりと審理されるが、本裁判で『原告側の主張は話にならない』ということなら仮の差し止めはできない。しかし、現在主張していることにもっともな点があり、本訴でも認められる可能性が高いと裁判所が判断したことで、①、②とともに仮処分の決定に至った」(エムケイ側・弁護士)

  各交通圏公定幅下限運賃との差(比率)は次の通り。▽京都約15%▽大阪約10%▽神戸約10%▽滋賀・大津市域約17%、湖南約10%▽福岡10%▽名古屋約12%▽札幌約12%▽東京(公定幅上限・初乗り1回分短縮)


本紙 青木社長に緊急インタビュー

【京都】京都市域の他の事業者が初乗り1・7km運賃を適用しているのをしり目に初乗り2kmを維持しているのは、近距離利用者をできるだけ減らし、営収が高くなる中・長距離利用者を取り込もうという狙いがあるようだ。各地で初乗り短縮論議が高まる中、仮処分決定のかげでエムケイの営業戦略が見えてきた。青木信明社長は司法記者クラブ記者会見終了後、本紙の質問につぎのように答えた。

  ――京都市域では他の事業者が初乗り1・7kmに短縮しているが、エムケイは距離を合わせるつもりはないのか。一般紙記者会見では1・7kmまではエムケイよりも安い事業者があるという説明があったりで、記者間で戸惑った様子が伺えた

  「1・7kmに合わせるつもりは一切ない。そのようなことをしたら、利用者が戸惑うだけだ。現状の初乗り距離は変えない」

  ――深夜早朝割増廃止申請をしているが、継続するのか?

  「業界の現状には満足している。これでいいのではないか。しかし、業界がこのまま動かないのなら、申請を取り下げてもよいが、1社でも認可されるようなことになれば、当社も審査の継続を望む」

  ――京都市域は準特定地域に留まるという見方が強いが…

  「準特定地域だろうと、特定地域だろうと、おかしな点があれば訴訟をする用意はいつでもある」