トム・ホワイト・ウーバージャパン代表インタビュー
豪の経験生かし、日本式ドライバーサポートセンターの構想


【愛知】トム・ホワイト・ウーバージャパン・モビリティ事業ゼネラルマネージャーは9月6日、名古屋市中区の「ヒルトン名古屋」で行なわれたフジタクシーグループによるウーバーアプリ配車開始に関する記者会見と出発式終了後、本紙の単独インタビューに応じた。タクシー業界の関心事は、ライドシェアをやるのではないかという疑念と配車アプリの使用手数料だろう。公式発言なので、ホンネは引き出せなかったが、行間には柔軟な対応の姿勢が伺える。トム・ホワイト氏へのインタビューは次の通り。

オーストラリアでウーバーのパワーを目の当たり

  本紙  まず、トムさんのプロフィールからお伺いしたいと思います。オーストラリアご出身ということしか存じ上げないので、どのような経緯でウーバーに入社されたのか。その辺の経緯からお伺いしたいと思います。

  トム  ウーバーに入社したのは3年半前です。今年年末には4年になります。他の企業では短い期間と言えますが、ウーバーにとっては長い期間と言えます。
  ウーバーに入社したのは、パースという、オーストラリア西海岸にある小さな町です。その町で、小規模にウーバーが立ち上げた。ウーバーが短期間で事業を拡大していくのを見て、その間にウーバーに対する興味と情熱が高まっていきました。
  ウーバーが大きな役割を果たしている姿を、実際にこの目で見たのです。400万人もの利用者を抱える組織に成長しました。その分が、何万人ものドライバーの追加的な収入源になっていました。私たちが構築したパワーを目の当たりにしました。ですから、私はこの仕事を誇りに思っています。
  日本では、オーストラリアで私が見たようなインパクトは、まだないが、われわれはそのパワーをもたらすことができると思っている。同じようなベネフィット(商品利益)を、日本の皆さんにも享受していただきたい。
  日本に来る前、6カ月間、ベトナムにいたが、そこで、ベトナムの事情を学んだ。ビジネスだけでなく、私にとっても、ひじょうに良い経験をして、2月に日本に来ました。日本は、他の国とは違ったタイプのマーケット力を持ち、ユニークだと思いました。
  私は今、東京に住んでいて、代々木公園でランニングをするのを日課としています。夜の10時、11時に走っています。
  そのとき、代々木公園の周辺には、にタクシーが止まっています。見ると、運転者は座席を後ろに倒し、寝ていたり、スマホをいじったりしている。そうした状況を見て、何とかしたいと思いました。
  それは、タクシーが客待ちしている状況で、通常なら、家に帰り、子どもと遊んだり、一緒に過ごす時間です。
  しかし、そうした時間は、何の収入も得られません。そうした状況を何とかしたいと思っています。ですから、私は、チームのメンバーによく言います。1、2年後には、代々木公園で仮眠を取るという状況はなくなり、利用者が増えて忙しくなり、ドライバーの状況が良くなると。
  それが、私にとっては、ハードなメッセージというように思っています。

  日本のタクシーはサービスレベルが高い

  本紙  トムさんは、普段からタクシーを良く観察されていることと思います。実際にタクシーを利用されたことがあると思いますが、日本のタクシーは東京、名古屋、大阪など、それぞれ地域で違うと思いますが、どのような印象を持っていますか。

  トム  まず、すべて、どこへ行っても、サービスレベルは素晴らしい。私は、世界中のどこへでもウーバーを使いますが、日本の「おもてなしの精神」は、ひじょうに素晴らしいと思っています。これは、どの都市に行っても同じですね。
  ただ、車齢やクオリティについては、都市によって違いがあります。会社によっても違うと感じています。
  私は、タクシーに乗ると、必ずダッシュボードを見ます。そうすると、ディスプレイが1つだけのタクシー、3つも4つもあるタクシーなど、違いはあります。テクノロジーは都市によって、会社によって違うというのが分かります。
  1カ月ほど前、大阪にいましたが、タクシーに乗るとき、「カードは大丈夫ですか」と必ず聞きます。たいていのタクシーは「カードはできます」と答えますが、「カードはできません」と答えられたこともあります。
  そうした点で、テクノロジーのレベルが違うのだな、と感じたことはあります。タクシーの印象としては、ひじょうに複雑だな、ということです。やはり、それは、私たちにとってチャレンジングだな、と思います。
  ただ、何かテクノロジーを持ってきて、それをそのまま日本に当てはめただけでうまくいくとは思っていません。やはり、日本には日本のニュアンスというものがあり、それに適応してくことが必要だと持っています。
  ですから、私たちの方も学んでいるといころで、私にとっては、それがおもしろいと感じています。

毎週のように大阪を訪れている

  本紙  最近、大阪を毎週、訪問されているようですが、それはタクシー会社を訪問するためですか。

  トム  その通りです。交渉以外にも、いろいろとやっているので、それだけではありませんが、私としては時間があれば、パートナーシップを優先させ、かなり頻繁にミーティングを行なっています。
  新幹線を頻繁に使っていますが、先日は台風(21号)の影響で、米原駅で15時間、缶詰になりました。12時30分に新大阪に到着する予定だったのが、12時に米原駅で止まってしまったのです。私はまだいい方で、もっとたいへんだった人たちは大勢います。

  本紙  そのとき、ウーバーが呼べたら、と思いませんでしたか?

  トム  駅から出て、タクシー乗り場に行っても、たくさんの人が並んでいました。しかし、待っていても来ません。あの悪天候の中でクルマに乗るのは、とてもたいへんなことです。

タクシードライバー不足への対策も考えている

  本紙  日本のタクシー業界では、運転者が不足しています。そうした中、トムさんは、タクシードライバーを募集したり、養成するというようなことを言われています。

  トム  タクシー会社の人たちといろいろと話をしました。いちばん共通の悩みは、タクシードライバーを募集しても、定着して勤務を続けることが、なかなか難しい、ということでした。
  世界中のいろいろな市場で、ドライバーのマーケッティングをしている。その都市によって、タクシードライバーだったり、一般のドライバーだったり、それぞれ違いはありますが、同じように、ウーバーをプラットフォームとして使ってみてはいかがでしょうか、ということで、ドライバーを募集してきました。
  そうした経験を日本でも生かしたい。ウーバーのプラットフォームを日本のタクシー会社にも使っていただき、運転者の募集に生かしてほしい。
  大切なのは、タクシー運転者が、ものすごく魅力的な職業になるということなんです。ことわざに「馬を水のあるところへ連れて行くことはできるが、飲ませることはできない」というのがあります。それと同じように、募集をすることはできるが、その後、おもしろいというか、それが魅力的な仕事で楽しくて、ひじょうに誇りの持てる仕事であると思ってもらえることが必要だと思っています。
  今すぐにできるとは思いませんが、魅力的な職業にすることはできると思います。
  では、具体的に、どのようにするかだが、まず、いちばん大切なのは、乗車率を上げるということです。忙しくすることにより、実際に仕事をする時間が少なくても、稼げるようになります。そのことにより、他のことで楽しむ時間をつくることができます。
  つぎに、ドライバーのサポートです。アプリの使い方が分からなければ、サポートする、問題があれば、解決のお手伝いをする。すべてが、うまくいくケースとは限らないと思うので、何かが起こった際には、私たちがすぐにサポートの手を差し伸べることができます。
  第三にコミュニティです。ウーバーとドライバーと利用者がつながるコミュニティで、例えば、クルマがキレイだった、サービスが良かったというお礼を、利用者がドライバーに直接伝えることができます。
  そうしたコミュニケーションがあることで、ドライバーもできるだけのことをしようとするし、やりがいが出てきます。そこにいて、楽しい環境を提供することができます。
  「このタクシーはキレイで良かった」「ドライバーが親切で良かった」などのシグナルを受け取ることにより、ドライバーもやりがいを感じることができます。
  まとめますと、タクシー会社のドライバー募集のお手伝いをするだけではなく、この業界自体も魅力的なものになって、若い人たちも環境自体が魅力的だから、ドライバーになりたいと思えるような環境を作っていきたいと思っている。

ドライバーサポートセンターの構想

  本紙  その入り口となるのは、やはり、SNSということになりますか?

  トム  いくつかの方法があります。それだけではなく、電話もあります。アプリケーションの中に、チャット機能を持っていますし、Eメールの場合もあります。それに加え、日本ではまだ、導入されていませんが、ドライバーが直接、ウーバーに会えるセンターをつくる構想もあります。
  オーストラリアでは、すでに、主要都市にドライバーサポートセンターがあり、そこに行けば、ウーバーと話ができるようになっています。日本にも、それを導入する予定です。タクシー会社に情報を提供し、そこからドライバーが情報を得ることもできます。いろいろな形で情報提供ができます。

  本紙  フジタクシーグループさんの話になりますが、本日からスタートということですね。

  トム  はい。本日の午前11時にスタートしました。あなたも、アプリに登録すれば、ウーバータクシーに乗ることができますよ。もうすでに、トレーニングを終えていますので、ドライバーさんも使い方が十分に分かった状態です。今後、小さな間違いはあるかもしれませんが、改善しながら、よりよいものをつくっていきます。

  本紙  ウーバーによるタクシー配車は、先日、淡路島でインバウンドをはじめとした観光客をターゲットにした実証実験が始まりましたが、大都市での本運行というのは、日本では初めてだと思います。
  ウーバーのシステムで、タクシーに使うのはどうかな、という点がいくつかあると思います。一つには、ダイナミックプライシング、もう一つは、相乗り――日本ではまだ、制度化されていないウーバーのシステムがいくつかあると思います。
  それらを除外して、今の日本のタクシー制度に見合うシステムでやっているということなのでしょうか。

  トム  おっしゃる通りです。メーター制運賃なので、実際に名古屋の町を走る他のタクシーと全く変わらない料金です。ダイナミックプライシングについては、国土交通省と議論しましたが、今のところ導入していないということなので、将来的には変わるかもしれません。相乗りも同様です。ライドシェアは、今のところ考えていません。

  本紙  時間制運賃はウーバーではやっていないということですね。

  トム  従来と同じメーターを使っているので、料金は全く同じです。動き出すときにメーターを入れて、止まったときにメーターも止めます。ドライバーが、そのメーターが示した金額をアプリにインプットするだけです。

  本紙  インプットするのはドライバーですか。

  トム  今はマニュアルでやっていますが、将来的には自動になるかもしれません。

タクシー会社のアプリ手数料率は公表できるか

  本紙  先ほどの記者会見でも質問がありましたが、それに対し、トムさんは守秘義務があるとして、具体的な数字は示されませんでした。実は、タクシー事業者にとってのいちばんの関心はアプリの手数料率なのです。
  業界内でも、いろいろな意見があり、ある人は5%以内だったら考えたい、ということを言っています。もしも今後、ウーバーアプリを広めようというお気持ちがあるなら、ある程度、「ウーバーだったら、こうしますよ」ということを、数字は示さなくても、アバウトな表現でアナウンスしていった方が、裾野は広がりやすいのではないかと思いますが…。

  トム  そうですね。いいアドバイスだと思います。しかし、個別の事業者と交渉していると、フレーマーというのがあるので、一方で数字を出してしまうと、一方で交渉するというのは難しいので、今日、具体的な数字についてはお伝えすることはできないのですけれども、一方、ある程度の目安がほしいという意見があることも、分からないでもありません。
  今、言われた数字は範囲の中に入っているかな、と思います。実際に、事業者さんと1対1で話したとき、数字を伝えると、嬉しい顔をされます。一般的に言われるような、20%とか、30%などの数字ではないことは申し上げることができます。

  本紙  お忙しいところ、ありがとうございました。