「かつての規制緩和の寵児」MK値上げへ
安売りで運転者離れ歯止め掛からず音上げ=H


【京都】京都のMKが4月21日、自社グループのホームページで5月10日から運賃を平均15%値上げすると公表した。それでも京都市域交通圏で4月1日、実施された普通車・初乗り1・2キロ450円の「ちょい乗り」運賃とは、まだ15%の開きがある。京都運輸支局は20日、MKの新運賃の届け出を受付けたもようだが、「認可するな」など批判の声が上がっている。

やりたい放題のMK運賃

  MKは今後、20日間の周知期間を経て、現在の中・小型車種運賃を普通車に統一。初乗2キロ600円、距離制加算302m80円。2〜10キロ平均で値上率は中型10%、小型17%、時間距離併用1分50秒ごと80円にする。一方、時間制運賃は4月1日実施の公定幅下限とし、深夜早朝割増は1時間繰り上げ、市域他社が実施している22時に合わせる。5千円超え分半額の遠割は継続適用。距離制では下限割れとなるが、時間制では他社が適用する公定幅に入り、下限にする。

多種多彩な車両を導入

  また、自社LPガススタンドのない京都市域交通圏南部では、ノートE、セレナEパワー、ハイブリッド車両を適用し、市内では現存のコンフォート、スーパーデラックスをしばらく使用する意向を示した。EVのリーフも徐々に増やす方向だ。ジャパン・タクシーについては、この1〜2年はEパワーやハイブリッド車両を代替にするため、資金が枯渇するが、耐久性などが証明され、費用対効果で経営的に導入メリットが目に見えてきた段階で検討する考えだ。

公定幅運賃の意味なくなる?

  京都のMKが営業する京都市域交通圏では現在、準特定地域に指定されており、4月1日に現在の運賃改定審査開始条件である「7割ルール」に則り、普通車上限・初乗り1・2キロ450円の公定幅運賃が実施されたばかり。

  仮にMKの新運賃の届け出を京都運輸支局および近畿運輸局が受け付ければ、もはや公定幅運賃の意味はなくなるとの指摘が相次いでいる。公定幅運賃制度下では、運賃の届け出があった場合には一旦は受け付けなければならないということもあるだろうが、果たして認可状は交付されるのか。

何故かMKに甘い運輸局

  京都市域交通圏では、3年前にも中・小型の車種区分を残した上で公定幅運賃変更が行われ、1・7キロ590〜600円(上限、その後、MKなどが提起した運賃裁判で下限は550円〜560円に伸長)となった。このとき、MKの運賃は公定幅下限割れとなり、ルールによって公定幅運賃への是正が行われなければならなかった。しかし、実際には1、2回の口頭指導で終わり、運賃変更命令には至っていない。

  そして、今回のMK独自の「運賃改定」届け出を、仮に当該支局および運輸局がこの運賃を受け取れば、業界から「何のための特措法なのか」という、大きな批判を受けることになりそうだ。

認可なら運賃制度を毀損

  MKの2017年度決算を見ると、本業のハイヤー・タクシー部門で営業黒字となっているという。そうなら、特に運賃改定をはやる要因は見当たらない。このような中、運輸当局が運賃改定ルール通り公定幅運賃に入るよう指導するのではなく、無条件に届け出運賃を認可してしまえば、黒字のタクシー会社が平均15%もの自由値上げをすることを許すことになり、準特定地域における公定幅運賃制度を大きく毀損することになるとの危機感を込めた声も出ている。

  MKが新運賃の届出を提出したら、当該支局と運輸局はどのような対応を取るのか、全国的に注目を集めることになりそうだ。

松田副会長、首をひねる

  4月1日実施の京都「ちょい乗り」運賃に尽力した京都府タクシー協会・経営担当の松田有司副会長はMKの新運賃が公表された21日、本紙の取材に「じつに、おかしな運賃だ」と首をひねった。

  松田氏は「4月1日で、京都市域交通圏の初乗り運賃は1・2キロがベースとなった。したがって、京都運輸支局がMKの届け出運賃を受付けるにしても、ベースが1・2キロなのか、確認する必要があると思うが、その辺はどうだったのか、疑問が残る。また、小型、中型運賃に分かれている運賃を普通車に統一するには、最低でも中型運賃額に合わせなければならないと近畿運輸局の運賃担当者から聞いている。その上に立てば、今回、届け出のあったMKの新運賃は、1・2キロ400円、そこから2キロまでの800mを200円というように分けて考えたのではないかと推測する。しかし、そこはルールにしがたえば、2キロまでの800mは最低でも210円でなければならないのではないか。さらに、深夜早朝割増運賃の1時間前倒しは、定額迎車回送料金の設定同様、認可申請が必要になるが、その前提は公定幅運賃に入るか、百歩譲っても、1・2キロ運賃にしておかなければ審査されないというのが本来の姿だ」と述べ、近畿運輸局とのデキレースだとしても、これまでのルールを無視したやり方は看過できないとの見方を示した。

  その一方、MKの現在の小型、中型運賃が普通車に統一され、15%の値上げとなるが、京都市域交通圏の大多数の事業者が公定幅運賃上限となる1・2キロ450円を適用しており、仮に実施されれても、その上限運賃からは15%安い運賃となる。この点では、値上げしても従来通り「京都一、安い運賃」を維持できる。

  こうした運賃の届け出について、松田氏は「労働条件の向上という点では良いことだ。そのやり方には問題があるとは思うが、全体の底上げにつながることには違いない」とやや奥歯に物が挟まったような表現を交え語った。その上で、「しかし、そうは言っても、違法運賃であることは明らか。近畿運輸局と京都運輸支局はMKが新たな運賃を適用した後も、是正指導や変更命令を行わなければならない。けれども、その前提で違法運賃を認可するとしたら、大いに矛盾している」と釘を刺した。

信明氏、かねてからの願い

  MKの青木信明社長は昨年1月、本紙に「値上げはしたいが、一気に公定幅に入るには30%以上の値上げになる。そんなことをしたら、利用者の皆さんの利便を図れなくなる」と述べ、時間をかけて運輸局と相談する意向を示していた。

  労働組合はこれまで、何回も運転者にアンケートを取ったが、常に値上げと現状維持はほぼ半々という結果だったという。こうした運転者の気分感情もくんだ運賃という見方もできる。名古屋MKは自由化となった名古屋交通圏で下限割れ申請を行い、認可されたが、地域他社運賃よりも1割安い設定だ。滋賀MKは大量減車に続き、4月21日から準特定地域の大津市域交通圏、湖南交通圏で公定幅下限に張り付いた。大阪MK、神戸MKもすでに公定幅に入っている。こうして見ると同じ準特の京都の動きは「解せない」と言える。

  規制のサンドボックス制度を盛り込んだ生産性向上特別措置法が間もなく成立する見通しだが、ついに国交省も「運賃のサンドボックス」を実施するのか、どうか。