田中亮一郎 第一交通産業社長に聞く
東京からこそ「地方の取り組み発信」を
次期全タク連会長が内定した川鍋一朗氏に期待


【福岡】全タク連正副会長会議は3月8日の3月定例正副会長会議で、6月の通常総会で任期満了、勇退する富田昌孝会長(日の丸交通会長)の後任に、川鍋一朗副会長(日本交通会長)を推薦することを了承。次期全タク連会長が内定した。川鍋氏が「一から地方の勉強をする」と、指名されたときに発言したように、東京で自らの会社が絡む四大手分裂問題の早期解決とライドシェアへの対抗、それに地盤沈下が進む地方への対応をどう両立させていくのか。タクシー業界は今、富田会長が就任した当時以上に東京と地方との格差が広がっている。この問題に取り組むことは、全タク連副会長で地域交通委員会委員長を務める田中亮一郎氏(第一交通産業社長)と、どううまく連携していくか、ということでもある。本紙は3月15日、福岡県北九州市の第一交通産業を訪問し、田中社長に話を聞いた。要約は次の通り。


  川鍋氏が次期全タク連会長に内定したのは、流れとしては普通でしょう。最大の会員数(車両数を含む)をもっているのは東京だし、発信する場所と言えば東京ですから、東京以外の人が会長になるとすれば、マスコミ等に露出する機会も減るわけですから。

  やはり、中央省庁やマスコミの本社機能が置かれる東京で、何が発信できるのか、というのがいちばん大切だと思います。

  そのときに、東京でやることだけが発信されるのではなく、全タク連の会長になられるというのであれば、まず、「地方でこのようなことをやっています。東京ではこのようなことをやっています」と両建てで話をしていただければありがたいですね。そうではなく、「東京はこうやっています、これをやります」などとなると、「東京でやれたのだから、他地域でもできるはずだ」など、有識者などは比較で考えるじゃないですか。

  そうしたときに、やはり東京で「地方ではこのようなことをやっています。その中で、営業形態の違う東京では、このような方式をとります。でも、全タク連としては地方の交通、高齢者対応に力を入れます、インバウンドに力を入れます」ということを先に言うべきではないでしょうか。そうしないと、地方の事業者には発言の場がありません。私たちも九州では言っていますが、全国版ではなく、どうしても九州版に載ることが多いのです。

  私は、数カ月前の全タク連正副会長会議でも言いましたが、全タク連の広報の仕方も考えなければいけないと思うのです。関係者もしくはタクシーに興味がある人だけに発信するのではなく、例えば、今こんなに宅配便業者が困っているのであれば、貨客混載をトラック協会と組んで一緒にやりましょう、などというところを詰めていくべきでしょう。また、委員会のあり方も、今まで通り、経営委員会、総務委員会という枠組みはあってもいいかもしれませんが、中身を変えていかないと…。

  タクシーというのは、どうも既存業界の権利を守るために何でも反対する、昔の護送船団方式というようなイメージがあるかもしれませんが、これは奥深く考えていくと、今のライドシェア問題にしても、国民全員が副業をもつような世界ではありませんか。

  そうしたとき、「儲かるところだけやって、儲からないところはやらない」。そういう仕事が多くなくなってくると、安いギリギリの賃金でやっている人たちの仕事が成り立たなくなります。

  そうなると、地方行政の財政の厳しいところは、社会保険料などが入ってこなくなり、ますます厳しくなり、東京一極集中や大都市へ集中してしまいます。高齢化が進む中、公共交通の移動権をどう守るのか、ということを、とりあえず公共交通機関として認定されたタクシーが、2次交通、3次交通と言われますが、どう守り、加わるか、ということをしていかないと、「安ければいい、早ければいい、簡単ならいい」というようなものに、待ったなしでやられてしまいます。現段階では準備ができていないわけですから…。

  もっと先になり、AIが出てくるとなると、生き残ったところは人件費がかからなくていいかもしれませんが、団塊の世代が第一線から引退し、高齢者が増える中、65歳以上の運転者も受入れているタクシー業界が受け皿でなくなったときに、他に仕事があるのか、ということだと思います。

  そこまで踏み込んで考えると、やはりタクシーは都会型と地方型に分けて考え、全タク連が地方型をメーンで発信していかないと、気付いてもらえません。

  小さな市町村を回ると、県のタクシー協会があるということを知らないところがあります。今、起きている問題に対してどう解決するか、ということはやってきたと思いますが、そこから先をどうしていくかは、あまり考えていなかったからではないでしょうか。

  今さらながらのことですが、規制緩和になっても、運賃が守られていれば大丈夫だったはずです。ところが、規制緩和の弾力的措置の中で、運賃の方が先に幅運賃になってしまいました。地方が経営維持に四苦八苦する中、社会的規制でさらに厳しくなっていきます。そうなると、兼業をしていたような地方のタクシー運転者はやりづらくなってきた、というのが実情だと思います。

  富田さんはこれまで、地方が厳しいということを指摘した上で、「東京はこのような形にするので参加してほしい」というようなことを言われてきました。川鍋さんの東タ協の会長としての発言は別として、全国の会長になると、最大公約数をどう取るのか。この辺が業界団体の会長がやるべきことではないでしょうか。

  また、組織の見直しや運営の仕方も変えていかなければなりません。そうする中で、地方の皆さんの気分感情を汲むようにしていただきたいと思っています。

  私もタクシー業界に入った30〜40歳代の頃はそうでしたが、「これではダメだ。自分は自分でやる」と思いました。しかし、その基盤となる法律そのものが変わってしまえば、自分のところにも影響が出てきます。ですから、やりたいことも、やれることも抑えてきました。その中で良い方法を見つけ、会社を何とか安定的に継続できるようにと努めてきました。

  けれども、それも考えられないような経済状況にある会社もでてくると思います。これから先は、車両価格も高くなる。新しいIT投資もしなければならない、という具合に…。また、いろいろなところで手数料も取られます。

  そうなると、どうやって生き残っていくのか、ということになります。私がそのようなことを言うと、皆さん、「それは田中さんのところだからできる」と言われます。しかし、グループ会社がある石川にしろ、熊野にしろ、車両数が少ないところでやっています。お金をかけて設備投資をしているかというと、そうではありません。地元の人たちと話し合い、今すぐにできなくても、2年後、3年後にやろう、という話をしてきました。

  そのようなことが分かる会長になっていただきたいと思います。馬力がある方ですから、頑張ってほしいと思っています。(談)