大阪から参入2年 ヘイロー 日本撤退
熾烈な資金獲得合戦 負け組に
タクシー無線配車システムの壁破れず

(2015年7月21日付・第338号)

【大阪】英国発のスマホ配車アプリを行っているヘイロー日本法人が、大阪における配車サービスを8月10日23時59分をもって「一旦終了」することを決め、ユーザー(契約しているタクシー事業者・団体)に書面で通知(一部ユーザーには直接面談)したことが明らかになった。「日本撤退」に安堵の表情を浮かべる事業者がいる一方、「日本法人が袂を分かち、白タク・ライドシェアに衣替えする準備を進めている」などの憶測が飛び交う。一部業界紙で完全撤退に否定するコメントが掲載されたが、最初に協力したタクシー事業者に多大な迷惑をかけながら撤退した外資系企業を再度暖かく迎えるほど、日本のタクシー業界はお人良しではない。

  ヘイロー・ネットワーク・ジャパン株式会社(本社=東京都港区、藤井清孝社長、現在は大阪市東成区に本社を置くヘイロー株式会社が事業を継承)は2013年9月19日、GMOペイメントゲートウェイ、ジェーシービー、三井住友カードの協力により、スマートフォンを利用したタクシー配車支援アプリ「Hailo(ヘイロー)」で、事前にクレジットカードを登録し配車依頼すると降車時に支払手続きが不要になる決済サービスを大阪で開始。スタート時に北港梅田ハイタク事業協同組合、ナニワ交通、中川交通、オール大阪交通が参画。その後、全大阪個人タクシー協同組合ほか、南港マリン、日本城タクシー、ふれ愛交通など多くの事業者が同サービスを始めた。

  そのヘイローが、7月10日付で、つぎのような「ヘイローサービス終了に関するお知らせ」と題する書面を大阪のユーザーに発送(一部ユーザーには直接面談)し、日本でのサービス中止を伝え、「サービス期間中は有意義なデータを得ることができた」と謝意を表明した。

  「このたび本社および株主の意向により、改めて国内展開の戦略を検討することとなり、誠に勝手ながら2015年8月10日をもって大阪における同サービスの提供を一旦終了させていただく運びとなりました。今後は、既存株主の株式会社光通信に加え、新たなパートナーと連携し、日本のタクシー業界の発展に寄与できるような新しいサービスの提供に向けて準備を進めてまいります」

  全大阪個人タクシー協同組合は100者程度の組合員が登録している大手ユーザー。7月13日、和田廣一理事長のもとへ、ヘイロー株式会社の担当者(大西社長)が「7月11日に連絡があった」と事情を説明しに来た。和田氏はこの事態に「先駆者だっただけにもったいない」との感想を漏らした。南港マリンの担当者によると、同社でヘイローに登録していた運転者は16人ほどだが、実際に運用していたのは5〜6人。それでも1人でヘイロー経由で1日5〜6件配車に応じ、売上を月間10万円ほど挙げる人もいたという。

  地元・ロンドンでは1日1万件の配車要請に応えているのに対し、大阪ではその10分の1程度、多くて千件前後だったと推測される。ただ、こうした数字を踏まえなくても、日々の営業状況を見ただけで「これで儲かっているのかな、と疑問に思っていた矢先だった」と語るユーザーもいる。今年に入り、米国ウーバーが福岡でライドシェア実験を始めた。これは国交省の中止指導に従い3月初めに「予定通り実験を終了」。こうした動きに焦りを感じたヘイローは大手事業者との提携を模索したが不調に終わる。原因は予想以上に顧客拡大が進まなかったことのほか、資金調達がうまくいかなかったためとの指摘もある。

  ヘイローは、白タク・ライドシェアとは異なり、タクシーと利用者を直接スマホアプリで仲介するシステム。しかし、必ずしも合法だったわけではない。全タク連の富田昌孝会長は「ヘイローは白タクではないが、ハイヤーやタクシーを使って商売をやる。ところが、『道路運送法第10条で値引きしてはいけない』ということになっているので、ヘイローは東京を諦めて関西でこそこそとやっている」と、かつて東京を「追放」されたことを明らかにしている。九州乗用自動車協会の田中亮一郎会長(第一交通産業社長)は白タク行為で浮上したウーバー、リフトと並んでヘイローを問題視してきた。

  昨年10月14日、北米から撤退したというニュースが流れたのは記憶に新しいが、日本でもそうなってしまったのは皮肉だ。