減車に水差す兵庫県の特区申請
自家用有償旅客運送登録要件緩和
阿部竜矢 近運局自交部長に聞く

(2015年2月1日付・第322号)

【近畿】特定地域指定基準案パブコメが1月25日で締め切られ、公示を待つのみとなった。一方、現行の準特定地域での需給状況と適正車両数が公示され、多くの地域で状況が改善されず、需給が釣り合うにはさらなる減車が必要との数字が示されてた。タクシーが減車に直面する一方、地域では自家用有償輸送が簡便な方法で導入されようとしている。1月下旬、阿部自動車交通部長に伺った。

  ――昨年10月14日から11月14日まで受け付けられた第26次構造改革特区提案で、兵庫県県土整備部は新規提案として7項目を提出した。その一つに自家用有償旅客運送の登録要件の緩和として、「市町村が必要な運送であると認め、かつ、市町村もしくは市町村が認める団体が、一つの小学校区の範囲内に限って実施するものとして、実施前に地域公共交通会議まはた運営協議会で報告した場合には、自家用有償旅客運送の登録を認めること」というのがある。特区提案が認められると、せっかく兵庫において減車が行われていても、他方では事実上の白タク、白バスが認められてしまい、タクシー事業者が準特定地域で行ってきた努力が無になってしまう危険がある。そうした提案申請を行っている県側と調整する考えはないのか。

  「内閣府で扱いが検討されるが、私はタクシー業界がやってきたことに水を差すことになりかねないと思う。地域公共交通の方向性は基本的に地域で考えてほしいというものだ。多様な関係者が集まり議論を尽くし、合意を形成するのが大事だ。そのように進めることが結果的には地域にとって望ましい姿だという考え方で制度をつくっている。そうした合意を経ないで一定の地域交通ができあがっていくのは、国交省が考えていた地域交通のあり方の方向性とは、ちょっと違う方向になると懸念する。それを上回るメリットがあるのかどうか。その辺の議論が必要だ。ここで言いたいのは即効性があるということだろう。いろいろな考え方をもつ人が合意に至るには時間がかかるが、それによって生じるメリットと比べてどうか。その比較考量という気がする。有償運送には補完原則があり、他人の需要に応じて旅客輸送するという行為は青ナンバーが担うべきというの考え方だ。青ナンバーには一定の事業性が確保されなければならないが、現実にはそれが成り立たない地域や分野がある。そのような地域では白ナンバーが、青ナンバーを補完する形でやっても良いというのが自家用有償運送制度。白ナンバーで輸送するには青ナンバーではできないということを確認する必要がある。それが運営協議会であり、地域公共交通会議だ。その手続きを踏まないで有償運送ができるというのなら、我われの考えとはちょっと違う。実際にこの提案が通るかどうかは分からないが、通っても、地域の運用の仕方で変わってくるとは思う」

  ――特定地域指定基準案のパブコメが締め切られた。今後、スケジュール的はどのようになるのか?

  「仮に基準が1月25日のパブコメ締切からそう時間がかからず、2月初旬ぐらいに候補地が確定する。準特定地域協議会の開催ルールに45日前に委員に通知して招集をかけなければならないというプロセスがあるので、最短でも準特定地域協議会の開催は3月後半になる。年度をまたぐかどうかというのは準特定地域協議会の本質的な問題にはならない。座長の日程もあろうかと思うので、4月以降の開催も当然ありうる。ただちに合意が得られれば運輸審議会で特定地域が適当かどうかが諮られる。審議会は毎日開催されているわけではないので、開かれるタイミングもあるだろうが、審議についても数回にわたり行われる可能性もあるので、1カ月程度かかるかもしれない。その地域が特定地域として適当であるとの判断が下されれば、最短で5月に特定地域の指定が行われ、その地域は官報で公示される」

  ――特定地域に指定されたら、ただちに特定地域協議会を開かなければならないのか?

  「我われは黒子なので、『特定地域協議会はこうして開く』、などと言ってはいけないのかもしれないが、開催の方法はさまざまだ。改正特措法に従うので、大枠の仕組みは違わないが、地域計画を策定して実施するまで、地域協議会での議論の進め方は地域によって異なるだろう。特定地域に指定されてからのスピードは地域によってまちまちになるかもしれない」

  ――今の大阪市域交通圏の状態を見て、特定地域に指定されるべきだと思うか?

  「今の基準案に適合する地域が特定地域になるべきという考え方なのだから、ある程度、皆さんは大阪のデータは分かっていると思うが、仮にそれが基準に当てはまるなら、供給過剰でそれを是正しなければならない地域なのだろう。それ以上でもそれ以下でもなく、私個人がどう思うかはあまり関係ないが、記者はどう思うのか?」

  ――数値上は指定される可能性は高いと思われるが…。

  「あとは合意がどうなるかだ」

  ――京都の運賃では、エムケイが高裁で運賃変更命令仮の差し止めが決定され、初乗り1・7km運賃と2km運賃が混在している。

  「いろいろな意味で不安定な状況になっているので、我われとしても残念な状況だ。早期に改善され安定した状況にならなければならないと考えている」

  ――エムケイの訴訟と深夜早朝割増料金廃止申請の事実上の保留状態と関係はあるのか。

  「裁判は裁判で、申請は申請だから、それは別のものだ。ただ、深夜早朝割増の問題は、ひじょうに影響が大きな割引だと思っているので、京都のいろいろな地域事情を踏まえた慎重な判断は必要だろうと思っている。遅いではないかという声があるのは承知しているが、慎重な扱いをしている」

  ――深夜早朝割増廃止に関する公示が出ている。例えば、輸送実績や本当に運転者に深夜早朝割増賃金が支払われているかをチェックするなど難しい側面があるので、それを含めて精査しているということなのか。

  「審査の中身までは言えない」

  ――京都の深夜早朝割増料金廃止申請で、原価計算書を添付していない事業者はあるのか。

  「一部で必要な書類が出ていないところがあるようだ。その補正のやり取りをしている状況だが、原価計算書が提出されていないところもある」

  ――そのような中、エムケイの公定幅下限割れ運賃の適用が認められるのだったら当社でも、という事業者が出てこないとも限らない。

  「そうならないことを願っている。法律で公定幅が設定されていながら、なぜあの会社だけが、という不満をもつというのは分かるし、そのような状況に我われはひじょうに心苦しい。裁判という形で我われの執行が止められてしまっているので、厳しい状況だが、我われの主張が認められる形で決着することを願っている」