自治体攻略 全タク連の田中地域交通委員長に聞く
「地方の敵は自家用有償 待の姿勢をあらためよ」
高齢化・人口縮小・過疎化の中、危機感込め訴え

(2014年11月7日付・第313/314合併号)

【全国】待ちの姿勢は、新しい仕事をしようとしている自家用有償運送、福祉有償運送の参入を許すだけ。先に市町村が話を始めてしまうと、タクシー会社が参入する余地はゼロに等しくなる。すでに地域公共交通の予算争奪戦の火ぶたは切られている。地方事業者はどうすべきか。田中・全タク連地域交通委員長に伺った。

  10月17日の自民党ハイヤータクシー議員連盟総会では、先生方に実情を分かってもらおうと思い発言しました。昨年の全国47都道府県の実働日車平均営収は2万7700円でした。

  しかし、47都道府県の平均営収がそれぞれ2万7700円なら、何とかやっていける範囲だと思いますが、中身を見てみると、2万7700円を超しているのは、47都道府県中6都府県しかありません。残りの41地域道府県の中で、残念ですけれども、いちばん最後は宮崎県の1万5000円。上位6都府県が営収のほとんどを占めているという中での平均営収2万7700円。

  本当に地方で困っている地域、営収1万円台や2万円のところで、30日稼働したとしても、せいぜい60万円。けれども1人で30日稼働することができるか、というと労働基準法でできません。その半分で30万円。その半分を運転者が持ち帰ったとして、15万円です。

  そのような意味で、今は運賃を値上げするか、地方の疲弊した地域ほど減車していかなければならない。ただ、そうした地域では、もともと事業規模が1社あたり5両、10両なので、減車に対しては抵抗があるのですよと。

  ですから、その辺のところを考えた上で、全タク連では預かり減車をやろうと考えている中で、規制改革会議がそれでは甘いと言っているが、それは営収の上位4、5都府県の話であって、他地域では、むしろ小規模事業者に手を差し伸べ、他のことをしていかねばなりません。それら地域では、市町村や住民とどう向き合うかを考えねばならない中で、やはり運賃や燃料の問題があるのですよと。

  47都道府県の総意として特定地域指定をお願いしているわけだから、もっと先生方も地元地域の実情を知っていただきたい。そうすることによって、この地域は指定しなければならない、というようなことが見えてくると思います。全タク連としても、必要ならば地域で細かな指導をしていくし、すでに3000を超えるデマンドタクシーや乗合タクシーをやっていると。3000超えと言えば、多分路線比ではバスよりも多いと思います。しかもそれは、大量輸送機関であるバスや鉄道が撤退した地域をタクシーが担っているわけで、それらを都道府県が抱えることができるでしょうか。

  苦しいけれども、運転者や事業者がやむなく兼業でやっているようなタクシー業界を何とかするためには、やはり一日も早く特定地域に指定していただくことが必要だと。それぞれの地域では地域協議会で知恵を出していくということをしなければならないのではないか、という話をしました。それに尽きます。

  特定地域指定基準の策定が遅れている要因は大阪にあります。改正タクシー特措法が成立したときは、日本維新の会も共同代表と言えども賛成していたのですから、特区問題等については、地域協議会の中で論議すればいいのです。ただ、協会としては特区構想の中身を見据えて、乗り場問題や違法客待ち駐停車問題をキチンとしていく努力をして、1000車でも2000車でも優良と言われるようにしようと。そうした中で、皆で優良会社になろう、ということではないでしょうか。

  運賃と需給だけのタクシー特区は、果たして了承されるものでしょうか。私は1業界だけの特区は認めれらるものではないと思います。何かと抱き合わせで、例えば、公共交通機関特区のような形にするなら別ですが。

  初乗り短縮については、先ほども言ったように、平均営収2万7700円で車両数が今のまま導入すれば、利益は低下します。福岡市のように、車両数が10数%減った上で初乗り短縮を実施すれば、何とか上昇します。ソフトバンクホークスも日本一になりましたし、いろいろと盛り上がりもあります。初乗り短縮はいろいろな状況に影響されるもので、本来なら反対です。次に福岡で考えているのは、普通車1本化です。

  北九州市は普通車に1本化していますが、福岡とは実働日車営収で1万円以上の開きがある。そうした地域では、1日2人の運転者は使えません。需要は、1日24時間平均的にあれば別ですが、一定の時間に集中します。乗り場で1時間待っていたり、流していたりしても、1人も利用者が来ないときもあります。だからこそ、地方都市では、市町村と組んでいかなければならない。

  とにかく、待っていてはダメです。待っていたら、新しい仕事をしようとしている自家用有償運送とか、福祉有償運送の人たちがどんどん手を挙げてきます。先に市町村がそこと話を始めてしまうと、タクシー会社はいろいろと条件がありますから負けます。予算は来年度から付きます。ですから、今のうちにタクシー業界は地域の実情を調べたり、市町村に提案しながら、パイプをつなぎましょうと声を大にして言いたいですね。

  基本は、補助金が出ると言っても、タクシー会社に直接出るものではありません。今、言われているのは、市町村が申請したものが認められれば拠出します、というものです。

  デマンドタクシーをやっているからと言って、国交省が直接補助をしてくれるものではありません。国交省は市町村にお金を出すわけですから。

  当社も、大阪府堺市や三重県熊野市でデマンドや乗合タクシーをやっていますが、そうすると他のときにはタクシーを呼んでいただける、ということになってきます。それで、1社だけでやれば赤字になるのだったら、数社、10社、20社が集まって分担すればいいのではないでしょうか。そうすることによって、NPOや自家用有償が出やすい環境がなくなっていくのだと思います。

  何かを変わるのを待つのではなく、変わるのを予期しながら、今からやっていかないと、そこに新しい業者が出てきてからでは間に合いません。例えば、自家用有償、福祉有償、運転代行も国交省が一括管理するというのなら、やりようはあります。

  しかし、自家用有償については地方に投げました。それに、間に合ったけれども、運転代行は国交省と警察庁が共管のときにペイントや約款を作らせ、保険の義務化ができたので、問題はあるけれども地方に権限が移管されただけ、という形になりました。

  何もしていなかったら、運転代行事業者が自家用有償運送をやりますよ。怖いのは、夜は運転代行、昼は自家用有償です。自家用有償は白タクでしたが、それがOKになるのです。私が調べた限りでは、自家用有償輸送事業者に運送約款はありません。では、安全の確保やもしものときの賠償は誰がするのか。それを許認可した市町村がすのか、という話になっています。デマンドで事故を起こして、1人8000万円、3人乗っていたら、2億4000万円の補償ができるのですか、と言いたいですね。(2014年10月23日、北九州市の第一交通産業グループ本社で)