関淳一 大阪タクシー協会最高顧問
大タ協が静観の構え崩さないなか、
橋下市長のタクシー特区提案に異議

(2014年9月11日付・第308号)

【大阪】関淳一・大阪タクシー協会最高顧問は9月5日、大阪市西成区の東洋タクシー本社営業所で、本紙記者のインタビューに答えた。橋下徹・大阪市長が3日、タクシー規制緩和特区を盛り込んだ国家戦略特区の説明を内閣府で行ったことで「専門の弁護士と相談し、場合によっては訴訟を視野に入れることも必要だ。真剣に国土交通省や全タク連に相談しなければならない」と指摘した。

――  4月に消費増税に伴う公定幅運賃が導入されて5カ月が経過した。タクシー事業者はどのような状況なのか。

    経営者が搾取するどころか、売り上げそのものが年間300万円に満たない運転者がたくさんいる。有給消化すれば、隔勤で月間11乗務に満たないこともある。仮に1乗務3万円の売り上げだとしたら、平均賃率60%として約20万円。差引き10数万円から燃料費や社会保険料、税金、その他諸経費を支払わなければならない。

  現状では経営はもたない。これで経営を持たせようとしたら、極端に賃率を下げているか間接経費を絞らなければならない。このような状況は異常だ。公共交通機関として安全・安心、サービス向上を続けるなら、運転者の教育費用も出ない。

  今の経営状況は最も詰まっているのではないか。売り上げに対し燃料費が占める割合は8・9%ぐらい。そこへ消費税が8%。合計16%余り。さらに、社会保険料が売り上げの8%程度かかる。これでは公共交通機関として対応できない。

  このような現状を訴えていかなければならないのではないか。「公共交通機関のタクシーを利用していただき、ありがとうございます。私たちは一層、サービス向上に努め、健全な企業体制をつくっていきます。しかしながら、このような状況では…」と訴えなければならない。

  全タク連を中心として、公共交通機関としてこうあるべきという姿を国交省にお願いをしていく。タクシーが現在、置かれている状況を包み隠さず語ってもおかしいことは何ひとつない。このような中、価格競争を行ったらどうなるのか。橋下徹・大阪市長のように「価格競争で安くなればいい」と言うのは論外だが、そうではなくキチンと現状を示し、どうしていくのかということを訴えていかねばならない。

  地方自治体はもっとタクシーについて論議し、場合によっては乗合タクシーを多用していってほしい。セダン型タクシーに1人だけ乗る必要はない。乗合タクシーをどう活用するかというプランを組み、運賃を安くしたいと言うなら、そうなるように工夫をしたらいい。

  タクシーはドア・ツー・ドアで、公共交通機関のなかで最も便利であることは間違いない。そのタクシーを育ててもらわなければならないし、私たちも自治体のそうした会合に積極的に参加していかなければならない。それをやらないから、NPOにやられてしまう。

――  8月、橋下徹・大阪市長は国家戦略特区のなかにタクシー規制緩和を盛り込むことを、いきなり記者会見で公表した。大阪タクシー協会は静観の構えだが、最高顧問としてどう見ているのか。

    橋下徹・大阪市長はタクシー「逆」特区を提案しているが、いまのような状況ではそう簡単にはいかない。いくらサービスマナーの良い会社を優遇すると言っても、総量規制をしないまま、そうした会社の参入や増車を許すというのなら、労働法に適合した労働環境が保持できるのか、どうか。運賃を安くするというなら、請負しかできなくなるのではないか。だから、答えに窮して「高い運賃が出てくるかもしれない」などと言う。

  市長として、高齢者の再雇用受け入れ先として、タクシーが最も大きな役割を果たしているのをどう思うのか。それらの高齢運転者は真面目に働いているが、競争できる状況ではない。教育で接客マナーを向上させるというならまだいい。しかし、売り上げが年間300万円に届くかどうか、という時代に無茶な話だ。人件費が総売り上げの20%程度しかかからない、という産業のなかでの競争なら、利益の出る範囲で従業員教育に充てることができる。

  いま、タクシー事業だけで利益を出しているところがどれだけあるのか。どんなに頑張っても利益が出ない。そこが分かっていない。一部、エムケイなどで運転者教育をキチンとやっているが、エムケイの賃金システムはリース制であることは間違いない。

  橋下市長は、そのような事業者で努力しているところが良い会社だと言っているなら、みんな賛成する。従来のタクシーは労働時間の制限が事実上ないに等しかったのを、国が規制をして労働時間を短縮してきた。そこを特区だと言って切り離せるのか、どうか。

  大阪に外国人観光客がたくさん来るが、その多くが西成の安い宿に泊っているというのが現状だ。橋下市長は、タクシーが抱えている矛盾とはどのようなものか、ということを把握していない。そうしたタクシー特区構想に対し、静観しているだけで良いのだろうか。

――  大阪業界はどう対応すべきと思うか。

    自分が代表を務めている党が衆参で賛成しておいて、その代表である市長がいつ豹変するか分からないという危ない時代なのだから、大阪タクシー協会として良い弁護士を抱えておかなければならない。

  はっきりしているのは、市民が選挙で意思表示することだ。しかし、その選挙が間近いにあればあるほど、何かで関心を引きとめたいという思いがあるのではないか。その標的がタクシーだとしたら、たいへん迷惑だ。長たるもの、多くの市民がタクシーを利用しているのだから、その人たちのことを大事に考えていかないといけない。

  大阪だけの問題と捉えるのではなく、全国の問題として反対運動に取り組まなければならない。タクシー産業が抱えている多くの運転者が生活できなくなる。その意味では、運転者の生活を抹殺しようとしているのも同然だ。

  やはり、弁護団を編成してでも対応してほしいということを、全タク連はじめ全国に向かって言っていかなければならない。好きにさせておいたら、どんどん広がるだけ。何とかしていかなければならないと思うのは、私だけだろうか。

  改正タクシー特措法の附帯決議は、東京では誰しもが大阪のためにつくったと言っている。それなのに何故、大阪は動かないのか、と。

――  具体的には?

    私は思うのだが、大阪は情報をもっと大事にしなければならないのではないか。そして、弁護士の人選。その弁護士を入れるなどして、勉強会をやればいい。そういう時代にしなければいかん。

  私たちは、商売のことだけを考えがちだが、こうなったらこうなりますよ、とアドバイスしてくれる人が必要だ。範囲は正副会長と常任理事などにして、そのような会議を持つ必要があるのではないか。いつまでも橋下市長に言われっぱなしではいけない。

――  ありがとうございました。