初陣は7月 条件付認可の可能性
京都発 深夜割増廃止に歯止めを


辻泰弘 元厚生労働副大臣 × 塚本新二 全自交関西地連委員長

(2014年6月21日付・第300号)

【京都】京都で運賃改定実施を含めた公定幅運賃が実施される4月前後、MK、ヤサカグループ、都タクシーグループなど大手のほか20社が相次ぎ深夜早朝割増料金廃止申請を行った。その初陣は7月に条件付きで認可の可能性がある。どう阻止するか。6月初旬、京都市内で、辻泰弘 元厚生労働副大臣と塚本新二 全自交関西地連委員長が対談した。全タク連の富田会長は利用しやすい低運賃導入に意欲を示すが、それにはこの問題をクリアしなければならない。

  塚本  深夜11時になると翌朝5時までの間、運賃が2割増になる深夜早朝割増制度が昭和45年頃、日本が高度経済成長を続けていた当時、導入された。医療、飲食業、24時間稼働する生産業の労働者が早朝に業務を終了して行くところがないということで、それらの人たちの足の確保を目的としてできたものだが、今、その深夜早朝割増料金制度が廃止されようとしている。

  まず、経緯を整理すると、平成16年から20年の間に京都の6社約650両に対し、国交省は深夜割増料金廃止申請を認可したことに始まる。これは、昭和45年頃の深夜早朝割増料金導入当時を知らない官僚がやったのではないかと思う。割増料金が要らないならどうぞと言われるがままに外してしまった。

  ところが今年の京都で運賃改定実施と公定幅運賃が同時に行われた4月1日を前に、大手を中心に深夜早朝割増料金の廃止申請が行われた。その後にも申請した事業者がいる。これら事業者が認可されれば車両数比80%の事業者の深夜早朝割増料金がなくなる。

  この動きに慌てた国交省は深夜早朝割増料金廃止に係る通達を出した。深夜早朝割増賃金が当該運転者に支払われているかどうかを立ち入り監査するとしている。しかし、実際にこれを実施するには無理があるのではないかという声も出ている。事業者ごとに賃金体系が違うし、給与明細を見ただけで、どこからどこまでが深夜早朝割増賃金分かということは分からないからだ。

  深夜早朝割増賃金が支払われる権利は、我われ労働者側にあるのに、それをなくされてしまえば、結果的に労働者にしわ寄せが来るということになるのではないか。これはゆゆしき問題なので、労働組合は行動しなければならない。

深夜割増廃止で文書 認可なら本協定締結

  私が所属している京都相互タクシーと京都相互タクシー自動車もその申請を提出したが、これに対し、労働組合として会社側に現在の歩合制賃金を時間制賃金に換算する計算をする契約をしなさいという文書をつくった。これを元に国交省なり、厚労省にチェックしてもらった方が合理的ではないか、というのが私のアイデアだ。

  今、ホワイトカラ―・エグゼンプションを入口として政府がやろうとしているものは、最終的に時間外手当の排除など、成果主義に基づく労働強化に行きつくものだが、これらはすでにハイタク産業では実践されている。そういう意味では、この流れは時代のすう勢なのかもしれない。

  話を元に戻し、この文書だが、国交省が京都相互グループ2社の申請を認可したなら、即刻文書を成文化し、労使で捺印することになっている。

    会社としてこの文書を受け取ったという受け付け印が押されているという状態になっている。

  塚本  うちの会社も深夜早朝割増の廃止はやりたくないが、京都の大手2社が深夜早朝割増料金の廃止申請を提出した。今、大阪で9割が採用している5000円超え分半額の遠割運賃は、事業者によって異なるが、100人の利用者のなかで1割あるかないかで、営収ベースでは数%。ところが、深夜早朝割増料金が廃止されれば、深夜11時以降は初乗り分の利用だろうが5000円超えの長距離利用だろうが平等に2割増がカットされ、この時間帯の営収は2割近くダウンになる。

  同時に、先ほども言ったように昭和45年の国からの通達で、深夜10時以降は25%以上、賃金を増やしなさい、ということになった。しかし、それではタクシー会社が困るので、深夜11時以降は利用者からその分を運賃に載せることを認める、という理屈になっている。今回の京都のケースは、営業政策として深夜早朝割増料金を廃止したいとするもので、廃止すれば利用者が増えるということが前提となっている。しかし、地域の7割以上が廃止すれば労働対価が償えないと国交省は慌てた。労働基準法第37条に「支払いなさい」と明記していあるものが、できなくなるからだ。

  そして、京都で8割の事業者(車両数比)で深夜早割増が廃止されれば、全国に波及する恐れがある。すでに、広島、長崎、愛媛などで検討に動く事業者が出てきたと聞く。そうすると、ゆくゆくくは全国で深夜早朝割増料金がなくなるという可能性も否定できない。そのようなことをパブリックコメントにして提出したら、4月中旬に既存の廃止している事業者にもチェックに入るという監査通達が出た。恒久認可にはどうするのか、と近畿運輸局の黒田唯雄・旅客第二課長に聞くと「当局は恒久認可という言葉は使った覚えがない」という回答だった。

  黒田氏は、そのときの申請が認可条件で認可された運賃が、市場の変化や法律や公示・通達が変更されれば、それに合致するように逐次変更していく、と言うのだった。

    現在、京都では深夜早朝割増料金をしないということが、6社に認められているということだが、それで、深夜早朝の2割増運賃を皆がやめようとしていると。京都・相互タクシーグループも廃止申請をしたのか。

賃金犠牲にした廃止 労組として認めない

  塚本  そうだ。しかし、認可されれば、深夜早朝時間帯の売り上げが2割減になるが、私がつくった文書が労使協定となれば、2割落ち込んだ分を仮想営収とみなし、例えば、夜間専門の運転者が40万円の月間営収でも50万円の売り上げがあったとして給与計算することになるので、会社は立ち行かなくなる。なので、この文書が、申請を却下させる唯一の方法だと私は考えた。

    しかし、申請した全社が却下されなければ意味がない。

  塚本  全社を却下させるため、まず1社が足を踏み出さなければならない。深夜早朝割増廃止をスタンダード化させないために。

    会社としても廃止せざるをえないし、塚本さんもそう思ったと。しかし、3月に会社が廃止申請した時には塚本さんは反対されたのか。

  塚本  私は反対だ。しかし、反対、反対と叫んでいても、国が認可してしまえばそれで終わりだ。だから、楔を打ち込むためにこの文書をつくった。最初の深夜早朝割増廃止のとき、深夜早朝の時間帯の営収は従来の2割増で計算するということを労使で合意した文書があることを前提に認可すれば何の問題もなかった。 しかし、これは労使間の問題だとしてそこまで踏み込んでチェックしなかったから、多数廃止申請が出た後で監査に入るという通達を出さなければならなくなったのではないか、と先日の局交渉では指摘した。今頃、監査強化をしたところで、認可した後では物理的に無理ではないかと。

    それで、最終的にこの文書をもとに作成した協定書を会社は受けるのか。

  塚本  もし、受けなかったら裁判をする。

    いつ頃、協定はできるのか。

  塚本  国交省が深夜早朝割増廃止を認可したときだ。認可の瞬間にこの文書を本編に変えて会社に提出する。

    塚本さんの狙いはこの文書により、近畿運輸局に認可させないようにすることにあるのか。

  塚本  労働組合が所属している会社にこの文書を提出し、会社が飲まなかったら裁判を起こす。同時に国交省にも裁判を起こすと先の交渉のときに明言している。この文書により、労働者に原告適格性が出てきたからだ。行政不服審査請求も可能となる。

    基本的には労働者の当然の権利である労働基準法を守ろうということなので、タクシーの賃金は基本的には歩合制だから、結局、深夜早朝割増料金が廃止されれば、そのしわ寄せはすべて労働者に向かう。深夜手当等、労働基準法で定めている当然の権利に食い込んでしまう。それが必然的になると。

  塚本  他の運賃割引は、日本が自由主義経済である以上は、ある意味では労組としても認めざるを得ないところがある。それは企業のアイデアとしてやっていることだが、しかし、この深夜割増料金を廃止するということとは、質が違う。

    そうなんだ。

  塚本  憲法25条で、すべて国民は文化的健康的生活を営む権利があると謳われているにもかかわらず、家族との団欒も我慢して深夜労働を行っている。それを他の割引と同じにするな、というのが私の考えだ。

    そうなら監査には、本来厚生労働省が入るべきところだ。タクシーの規制緩和は小泉改革の一環として出発し、労働者の権利が大きく損ねられるという見地から、厚生労働委員会で質問をしてきた。それは10数年前のことだが、厚労委員会では福島瑞穂氏と私、国土交通委員会では辻元清美氏と渕上貞夫氏がやっていた。規制緩和には両面からのアプロ―チがあった。新自由主義的な競争や効率化、規制緩和は万能という主張の一つの象徴がタクシーの規制緩和だったと思う。 折しも、公共事業の抑制があり、仕事のない労働者の受け皿がなかったということもあり、そうした人たちがタクシー運転者として就職したということも規制緩和の背景にあった。そのなかで、厚労省にもっとチェックしなさい、と言ったこともあるが、そのことの具体的な表れだと思う。

  厚労省は深夜割増賃金をしっかりとチェックしなければならないのだから、全国で京都の6社だけが深夜早朝割増がないことが認められている。極めて固有のケースだと思う。

  塚本  しかし、これが8割も走るとなると、深夜眠たくて危ないのに、労働対価を下げてまで誰が走るのか。運転者には何のメリットもない。詰まるところ、深夜早朝の国民の移動権が損なわれることにもなる。

    深夜労働を拒否してもペナルティはないのか。

  塚本  普通のサラリーマンのように、仕事をしようがしまいが、月給20万円支払うというのなら、深夜の運転者は来る。しかし、タクシー業界では固定給を完全補償することはありえない。しかも、この産業は高齢化に歯止めがかかっていない。60歳を超えてまで、なぜ深夜を走らなければならないのか、という声もある。交通政策基本法が施行されたが、同法は国民の移動する権利を保障すると同時に安心・安全を保証する法律。だが、深夜のタクシーがなくなれば交通政策基本法にも反することになる。

    利用者サービスとして、深夜に安い運賃を提供しようという狙いがあるのかもしれないが、肝心のサービスを提供するタクシーがなくなれば、意味がない。それは根本的な矛盾だ。

深夜割増廃止は問題 京都の段階で歯止めを

  塚本  だから私はネズミの集団自殺だと言っている。

    MKの申請が認可されたらどうなるのか。

  塚本  それでいちばん苦しむのは運転者だ。

    深夜早朝割増料金は労基法の根本の部分だが、その料金を外すことを国交省は認めるのか? 現実として歩合制賃金があるなかで、深夜早朝割増運賃を廃止するということは、それにより運送収入が減った分を運転者が被らざるをえない。本質的には、それ以外に考えられないということは、実質的に労働基準法を骨抜きにすることとイコールであることを意味する。それを進めていくということは、根本的に問題だ。

  私は今、国会議員ではないが、もしも議席があるなら国会で取り上げるような問題だと思う。京都で現在実施している6社以外に広まろうとしている深夜早朝割増運賃の廃止は、働く者を犠牲にしてでも利潤を追求する流れがあり、その具体的な形だと思う。労働者は弱い立場にあるわけで、働く者が権利を守るという基本の部分を大事にしないと、どんどん経営の論理により労働者が不利な状況を甘受せざるをえなくなり、ゆゆしき問題だ。

  全国に広まらないよう、京都でしっかりと歯止めをかけなければならない。

  (6月4日、京都市内で)

  ▽6月4日、小雨降る中、京都北山の「しょうざん」で、辻泰弘・元厚生労働副大臣と塚本新二・全自交関西地連委員長に対談をしていただいた▽テーマは、京都から全国に広まろうとしている深夜早朝割増料金廃止に歯止めをかけられるか、について▽全タク連幹部からも「日本のタクシー運賃は高い」という声が聞こえてくるなか、京都で一人の男が阻止に立ち上がった…。