近畿運輸局
最高乗務距離の実態調査実施

(2013年9月2日付・第266号)

  最高乗務距離規制の無効を求めた行政訴訟の判決言い渡しが7月4日、大阪地裁であったことで、安全対策のための制度と最高乗務距離規制の公示は認められたが、計算方法とそこから導き出された距離数は事実上無効とされたことで近畿運輸局は8月29日、在阪労組団体に新公示に向けた考え方について説明した。

  近運局からは西川孝秀・旅客第二課長が「コンプライアンスをキチンと守っている運転者からも日勤250kmの最高乗務距離は短いとの指摘があった。それを見直すきっかけとして、司法判断が下されたので、再考したい。他地域の最高乗務距離は、日勤で北海道280km、東北270km、信越250km、関東270km、中部270km、中国260km、九州270kmと いうことで、全国で近畿が信越と並び、最も短い距離となっている。下限割れ低額運賃事業者数は少なくなってきたので、最高乗務距離規制の成果は果たせたのではないかと思っている。最高乗務距離を見直すにあたり、あらためて実態調査を実施したい」と述べた。

  調査対象は、大阪市域交通圏の事業者については、保有車両数70両以上の事業者。運賃改定の際の原価計算対象事業者28社、その他事業者(70両には達していないが行政訴訟で原告となった事業者)――となっている。前回、平成21年制定時(最高乗務距離・日勤で250kmとした時)は、原価計算対象事業者とワンコインタクシー事業者数社だったが、今回は調査の対象を広げ、大阪市域交通圏の4割が調査対象事業者となった。

  北摂、河北、河南交通圏については、車両数が少ないため、全事業者が対象。京都市と神戸市域でも4割の事業者が調査対象となっている。調査対象営業所は各事業者の判断で、同一地域に複数の営業所がある事業者については、事業者の判断で、主要な営業所を調査の対象とする。調査期間は、9月1日〜14日の2週間。前回は1週間だったので、その2倍の期間となる。調査数は保有車両数の多少にかかわらず、各事業者6人の運転者で、内訳は、日勤勤務者のうち昼勤3人、夜勤3人。正社員運転者のうち、比較的輸送量が多く走行距離の長い運転者を選択することになっている。ただし、正社員以外の嘱託者でも1勤務当たりの走行距離が長い人がいる場合は、調査の対象としてもよいとしている。

  日勤者で1稼働当たり13時間という拘束時間があるが、250kmをオーバーするので入庫するという運転者の拘束時間は10時間を切る。所定の距離を早く達成してしまったので、入庫時間が早くなったという運転者もいるが、その人には正直に調査票に記入し、例えば、出庫から入庫時間が10時間だった場合は、13時間の拘束でどのくらい走れたか、という換算をしていく。

  先の大阪地裁判決では、夜勤の方がスピードが出せるという指摘があり、実際のところは調査をしてみないと分からないことから。最高乗務距離制限をキチンと守らせている事業者には、「日勤で250kmを超える数字が出るはずはない」というところもあるかもしれないが、その中でも比較的走行距離の長い運転者を調査 の対象にするよう要請している。仮に、調査対象者が調査期間中に最高乗務距離をオーバーすることがあっても監査など処分の対象にはしないとしている。

  日勤の最高乗務距離の設定は、タクシー適正化・活性化特措法制定前年に行われた交通政策審議会で、日勤が多い低額運賃事業者は、距離単価が安いので、その分距離を長く走行しなければならないということがあり、当時のターゲットはワンコインタクシーなどの低額運賃事業者だった。一方、コンプライアンスを守り真面目に働いている事業者であっても、日勤で最高が250kmという数字は短すぎ、いろいろな弊害が出てきている。しかし、日勤に最高乗務距離規制を取り入れたことから、西川・旅客第二課長が言うように、低額運賃事業者が少な くなってきているのも事実。この点で、4年前に導入した最高乗務距離規制は一定の役割を果たした、ということもできる。

  調査を行う9月初旬から中旬にかけては、タクシー業界では閑散期。12月などの年末年始繁忙期の実車キロや走行キロなどと対比にして、繁忙期にはどのような数字になるかもはじき出し、いろいろな比較をしていきたいとしている。今回の調査の提出期限は9月26日。

  調査項目は、拘束時間とハンドル時間、休憩時間、客待ち時間など。高速道路走行についても具体的に記入することになっている。事業者が提出する全体票と6人の運転者の個別票の2種類がある。

  隔日勤務の最高乗務距離350kmについては、行政訴訟の対象となっていないが、今回の実態調査の結果、現状で妥当だということになればそのままにすることもあるが、見直す必要があれば見直すとしている。その際、新たな日勤最高乗務距離が長くなれば、そのバランスを取るため、長くするケースがあることも示唆されている。

  新御堂筋など国道で自動車専用道路になっている道路については、無料道路であっても有料の高速道路走行と同じ扱いにするかどうか、個別に判断するとしている。

  新公示は年内としているが、早ければ10月にも行われることになりそうだ。また、秋の臨時国会で上程が予定されているタクシー新法で定められる公定幅運賃によって新たな公示を見直すかどうかの論議も行われそうだ。

  交通労連に加盟する労組幹部からは「労働者の立場から言うと、労働意欲という観点から、効率的な営業をした上で、生活できる賃金を稼ぐには、ある程度の距離を走行しなければならない。新たな公示で、労働者が生活できる走行距離がこれなのか、という疑問が出ないようにしてほしい」という要望が出された。
  これに対し、西川課長は、「普段は200km前後の走行距離なのに、週末の金曜などに最後の利用者が長距離利用だったために現在の最高乗務距離をオーバーして、280kmぐらいになってしまった。ひとつに勤務でオーバーしても、他の勤務ではオーバーしないケースが多く、例えば月間勤務日数に最高乗務距離を掛けて、その距離数をオーバーしなければいいようにしてほしい、という要望もある。新公示を出す前には、関係者に打診して、問題のない最高乗務距離を設定 していきたい」と表明した。